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EV値とは?わかりそうでわからないカメラ用語を解説【意外と簡単】

カメラを趣味にしている方だったら、『EV値』という言葉はなんとなくでも聞いたことがあると思います。最近のカメラであれば、EV値を知らなくても問題なく撮影できてしまうため、しっかりと意味を理解している人は少ないかもしれません。

私もその一人で、「EV値が上がると明るくなるんだろうな〜」くらいの理解だったので、この機会にしっかりと調べてみました。

『EV値』のことをよくわからないままなんとなく来てしまったという方がいれば、私と一緒に学んでいきましょう。ちょっとややこしく感じるかもしれませんが、一つづつ確認しながら読み進めていけば必ず理解できると思いますので、もしお時間があれば読んでみてください。

EV値の理解が進めば、カメラの楽しみも広がること間違いなしです。

EV値とは?

早速結論ですが、EV値とは明るさ(光の量)を表すカメラ用の単位です。他に明るさの単位としては『カンデラ』『ルーメン』『ルクス』などがありますが、『EV値』はカメラで使う明るさの単位ということになります。

EV値の『EV』とは『Exposure Value』の略で、日本語にすると『露出値』となります。『Value』が『値』という意味なので、EV値と言うと『値』が重複してしまうのですが、慣例的にEV値と呼ぶことが多いようです。もしそういうのが気になる方は『EV』と言いましょう。

個人的には『EV』とだけ言う場合『Electric Vehicle』の方を想像してしまうので、『EV値』の方がよりわかりやすいかなと思います。まぁカメラの話をしている時に急に電気自動車の話をする人はいないと思うので、文脈でわかるとは思いますが…。

EV値の表し方

EV値は『EV1』とか『EV5』とか、『EV + 数値』で表します。そして『EV + 数値』で表記する場合は、明るさを表す絶対値となります。

※後から相対値も出てくるので、混乱しないようにしてください。

EV値が明るさを表す単位ということは「EV値が上がれば明るくて、EV値が下がれば暗くなるんだろうな」というのはなんとなく想像がつくと思います。では絶対値であるEV値の基準はどの様に決まるのでしょうか。

それが次のルールになります。

  • ISO感度:ISO100
  • 絞り値:F1.0
  • シャッタースピード:1秒

これら3つを満たした時に適正露出となるような環境の明るさが『EV0』です。最初にも書いたとおり、カメラ用の単位なので、上記のようなルールが決められているのですね。

この『EV0』を基準に、明るさが2倍になれば『EV1』、4倍になれば『EV2』。逆に1/2になれば『EV-1』、1/4になれば『EV-2』となります。

EV値と絞り値、シャッタースピードの関係性

次の表は『ISO感度:100』の時の絞り値とシャッタースピードの適正値をまとめたものです。

 絞り値
F1.0F1.4F2.0F2.8F4.0F5.6F8.0F11F16F22F32
シャッタースピード4EV-2EV-1EV0EV1EV2EV3EV4EV5EV6EV7EV8
2EV-1EV0EV1EV2EV3EV4EV5EV6EV7EV8EV9
1EV0EV1EV2EV3EV4EV5EV6EV7EV8EV9EV10
1/2EV1EV2EV3EV4EV5EV6EV7EV8EV9EV10EV11
1/4EV2EV3EV4EV5EV6EV7EV8EV9EV10EV11EV12
1/8EV3EV4EV5EV6EV7EV8EV9EV10EV11EV12EV13
1/15EV4EV5EV6EV7EV8EV9EV10EV11EV12EV13EV14
1/30EV5EV6EV7EV8EV9EV10EV11EV12EV13EV14EV15
1/60EV6EV7EV8EV9EV10EV11EV12EV13EV14EV15EV16
1/125EV7EV8EV9EV10EV11EV12EV13EV14EV15EV16EV17
1/250EV8EV9EV10EV11EV12EV13EV14EV15EV16EV17EV18
1/500EV9EV10EV11EV12EV13EV14EV15EV16EV17EV18EV19
1/1000EV10EV11EV12EV13EV14EV15EV16EV17EV18EV19EV20
1/2000EV11EV12EV13EV14EV15EV16EV17EV18EV19EV20EV21
1/4000EV12EV13EV14EV15EV16EV17EV18EV19EV20EV21EV22
1/8000EV13EV14EV15EV16EV17EV18EV19EV20EV21EV22EV23

例えば、カメラの露出計が『EV5』と判断した時(赤いセルの箇所)、適正な露出となる組み合わせは『F1.0 + 1/30秒』〜『F11 + 4秒』までの8通りとなります。

※実際の組み合わせはカメラによって増減します。

この8通りの組み合わせであれば、全て同じ明るさで撮影できるということになります。(絞り値とシャッタースピードが変わるので、もちろんボケやブレなどの写りは変化します)

ここで大事なのは、カメラの露出計がEV値を決めた後に『絞り値』と『シャッタースピード』が決まるということです。「絞り値とシャッタースピードが決まったから、EV値は◯◯だ」という順番ではありません。EV値は絶対値なので、まずEV値が決まり、その後に適正な絞り値やシャッタースピードが決まっていく、というのがカメラの内部プロセスになります。

EV値と段(ステップ)について

ある基準点から明るさが2倍(もしくは半分)になることを『1段』または『1(EV)ステップ』などと言います。

シャッタースピードと絞り値の図

この基準点をもとにしたEV値は『数値 + EV』で表し、相対値を示しています。
これは主にカメラの操作をする時に使われます。それに対して、先ほどの絶対値はカメラの仕様を表す時に使われることが多いです。

シャッタースピードと1段(ステップ)

シャッタースピードが半分になると、光の量も半分になります。
これを「シャッタースピードを1段(ステップ)速くする」と言います。
逆にシャッタースピードが2倍になると、光の量も2倍になります。
これを「シャッタースピードを1段(ステップ)遅くする』と言います。

これは直感的に理解できると思います。

絞り値と1段(ステップ)

絞り値は一見すると数値上、倍になっていないように見えますが、光の量は倍(半分)になっています。『F1.0』『F2.0』『F4.0』と倍々に増えて行かないのは、半径が1/√2倍になるごとに面積が半分になるからです。(光の量は面積に比例します)

なぜ半径が1/√2倍になると面積が半分になるのかについては数学のお話なので、気になる方は調べてみてください。

【実践編1】カメラの適正露出決定までの内部プロセスをシミュレートしてみる

EV値の基礎がわかったところで、実際にカメラ内でどのように露出設定が決まっていくのかを、カメラの気持ちになって脳内シミュレートしてみます。

前提条件として、カメラは『ISO感度:100』固定の『絞り優先モード』で使うということにします。

※本当はISO感度も露出を決定する一つの要素なのですが、今回は説明をシンプルにするために固定の設定とします。

①EV値を測定する

まずはこれがわからないと何も進まないので、露出計でEV値を測定します。
ここでは仮にEV値が『EV10』だったとします。

②絞り値を決める

『絞り優先モード』なので、ここは人間様が任意の値を設定します。
ここでは絞り値を『F5.6』にしたとしましょう。

③シャッタースピードが自動的に決まる

光の量の絶対値である『EV値』と人間様が決めた『絞り値』を元にシャッタースピードが自動的に決定します。先ほどの表をもう一度見ながらシャッタースピードを導き出してみます。

表の通りに見れば良いだけなので簡単ですね。普段はEV値を意識することは少ないですが、カメラの内部ではこのように絞り値とシャッタースピードがリンクして自動的に計算されています。

④絞り値を変えてみる

ついでに絞り値を変えてみます。

撮影してみた結果、「もう少しぼかして撮りたいな〜」ということで、絞り値を『F5.6』から『F2.8』にしてみました。

この表の通り、絞り値を2段分開けたので、それにリンクしてシャッタースピードが2段分速くなりました。

【実践編2】EV値が使われているカタログスペックを読み解く

カメラの仕様なんかを見ていると、ちょこちょことEV値が出てくることに気づきます。

今まではなんとなく「暗いところに強いんだろうなぁ」などの漠然とした理解で満足していましたが、これを機会にしっかり内容を読み解いてみます。

私はPENTAXのK-3 IIを使っているので、K-3 IIを例にしていきます。PENTAXのサイトからK-3 IIの仕様を見てみると以下の項目にEV値の記載がありました。

オートフォーカス

– 輝度範囲:EV-3~18(ISO100、常温)

露出制御

– 露出範囲:EV-3~20( ISO100・50mmF1.4)
– 露出補正:±5EV(1/2EVステップ、1/3EVステップ選択可能)

シャッター

– シャッタースピード:マニュアル:1/8000秒~30秒(1/3EVステップまたは1/2EVステップ)

http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/products/k-3-2/

一つづつ簡単に解説していきます。

オートフォーカス

  • 輝度範囲:EV-3~18(ISO100、常温)

『EV + 数値』で表されていることからも分かるとおり、EV値の絶対値の話ですね。『EV-3』の暗さから『EV18』の明るさまでオートフォーカスが効くということなんですが、ここで疑問が生じます。

「EV-3(EV18)ってどれくらいの暗さ?」っていうことです。

EV値ごとの明るさの例

絶対値であるEV値なのですが、一体私たちの目で見てどれくらいの明るさ(暗さ)なのか。その参考が次の表になります。

EV値
シチュエーション例
EV-3
 
EV-2星(1等級程度?)
EV-1
 
EV0
 
EV1
 
EV2
夜景
EV3
 
EV4
夜間の家庭室内(6畳60W蛍光灯)
EV5夕景
EV6夕景
EV7
日中の家庭室内(晴天)
EV8 
EV9 
EV10 
EV11 
EV12曇り・日陰
EV13明るい雲
EV14晴れ
EV15快晴
EV16快晴時の海岸・山・雪景色
EV17日の出
EV18 

これは富士フイルムの写真フィルムの箱に書いてある絞り値の目安表から読み取ったもの + αなので、シチュエーション例が入っていないものも多いのですが、『EV-3』〜『EV18』は大抵のシーンでAFが使えるであろうということが予想できます。

もっとも星なんかは、明るさ自体はオートフォーカスが効く範囲だったとしても、小さすぎるのでライブビューにしてマニュアルで合わせる事がほとんどだと思います。

露出制御

  • 露出範囲:EV-3~20( ISO100・50mmF1.4)
  • 露出補正:±5EV(1/2EVステップ、1/3EVステップ選択可能)

まず一つ目。

露出制御の項目の『露出範囲』なので、『EV-3』〜『EV20』の明るさの範囲であれば、適正な露出をカメラ側で導き出すことができるということだと思います。この記事中に何度か出てきた表そのものとも言えるかもしれません。…が、ここはちょっと自信がありません。

間違っていたら教えてください。

次に露出補正について。

これはカメラをやっている方であればおなじみですね。『数値 + EV』なので、相対的なEV値になります。ある基準値をもとに『±5EVの露出補正ができる』ということです。カッコの中の『1/2EVステップ、1/3EVステップ選択可能』というのは、「1段づつだけではなく、その中間の設定も可能だよ」ということを言っています。

例として、『絞り優先モード』の絞り値『F5.6』、EV値『EV5』の環境の場合の露出補正について、先ほどの表で確認してみます。

①の『EV5』を『EV10』のところまで持って行きたくなりますが、『EV◯』という表記は絶対値のため、動かすことはできません。絞り優先モードの場合は、露出補正をすると、結果的にはシャッタースピードが変更されることになります。

シャッター

  • シャッタースピード:マニュアル:1/8000秒~30秒(1/3EVステップまたは1/2EVステップ)

これはそのままシャッタースピードです。

『1/3EVステップまたは1/2EVステップ』とあるとおり、1段分の中間も設定できるんだなということがわかります。『1/8000』→『1/4000』→『1/2000』ではなく、『1/8000』→『1/6400』→『1/5000』となります。(1/3EVステップの設定の場合)

まとめ:EV値とは?わかりそうでわからないカメラ用語を解説【意外と簡単】

ちょっとややこしかったかもしれませんが、カメラ片手にダイヤルを動かしながら何度か読み返してみるとだんだんとわかってくると思います。

EV値は普通に撮るだけだったら表に出てこないし、露出はカメラが勝手に計算してくれるので意識しなくてもなんとかなるんですが、一度理解してしまえば応用の幅は広く、カメラの楽しみも大きくなるので、ぜひ頑張って読み解いてみてください。

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