一眼レフカメラと言えばボケを活かした写真。
主題のみにピントが合っていて、背景がボケている。そんな写真を撮りたいという方は多いと思います。私もF値の低い明るい単焦点レンズを買った時は、開放で背景がボケまくった写真ばかり撮っていました。
この記事ではそのボケの表現を生み出す為に使われる『F値』について、詳しく説明していきます。
実際に撮影して試してみた作例付きなので、F値の理屈は置いておいて、とりあえず「こんな感じになるんだ〜」という感覚だけでも掴んでみてください。
F値(絞り値)とは?
F値(絞り値)というのは、カメラレンズの『絞り羽根』という機構が持っている『光が通る穴の大きさ』の事で、『F2.4』や『F5.6』などの数値で表されます。
光が通る穴の大きさを変えるという事は、光の量を変えるという事であり、F値が小さければ小さいほど光の量は多く、F値が大きければ大きいほど光の量は少ないという反比例の関係になっています。
この光の量をコントロールする『絞り羽根』という機構と、シャッタースピード、ISO感度によって露出を決め、思い通りの明るさの写真にするというのが写真を撮る時の基本的なプロセスになります。
この3つの要素の関係について詳しく知りたい方は、以下の記事を見てみてください。
実はこの『絞り』には、光の量以外にも副次的に得られる表現方法があり、それが本記事で解説する『ボケ』になります。
なぜ絞り値を変えるとボケ量がコントロールできるのかはここでは解説しませんが、F値を小さくすればボケ量が大きくなり、F値を大きくすればボケ量が小さくなるという事を覚えておいてください。
F値(絞り値)別のボケ量を比較してみる
実際のボケ量の変化を見てもらった方がわかり易いと思うので、実例を交えながら紹介していきます。
使用カメラはAPS-Cセンサーの『PENTAX K-3 II』、レンズはタムロンの『272E(通称タムキュー)』です。
↑これはニコン用です(PENTAXのものがamazonに無かったので、参考まで)
1. F値(絞り値):F2.8
まずこのレンズの開放F値である『F2.8』から見てみます。
ピントは菖蒲の花に合わせているのですが、背景が大きくボケているのがわかると思います。
2. F値(絞り値):F4.0
次に1段絞って『F4.0』です。
この大きさで見る限り、あまり違いがわからないかもしれませんが、ボケ量は先ほどと比較して確かに小さくなっています。
もう一つの大きな違いとしては、F2.8とF4.0を比べると、F4.0の方が被写体がシャープに写っています。
レンズのレビューなんかで、「1段絞るとより一層シャープに…」というのを見たことがある方もいるかもしれませんが、開放で撮影すると若干甘い写りになる事が多いです。
良く言えば『柔らかい写り』と好意的に捉えることもできますが、なんでもかんでも開放で撮れば良いというわけでは無いんですね。
3. F値(絞り値):F5.6
更に1段絞って『F5.6』です。
大きくボケていた背景も徐々に輪郭が見えてきました。ほどよいボケ具合で、バランスの良い写りに感じます。
4. F値(絞り値):F8.0
次に『F8.0』です。
一般的に、レンズの性能を最も引き出せるF値がこの『F8.0』付近と言われています。レンズの美味しいところ(中心付近)を使えるためですね。
開放F値である『F2.8』と比べてみても、明らかに『F8.0』の方がシャープに写っています。
5. F値(絞り値):F11
次に『F11』で、これもシャープに写るF値となります。
6. F値(絞り値):F16
次に『F16』です。
背景にある花の形もだいぶ分かるようになってきました。
7. F値(絞り値):F22
かなり絞って『F22』です。
更に背景のボケが少なくなり、スマホやコンデジで撮ったのと同じような写りになっています。
8. F値(絞り値):F32
最後にこのレンズの最小絞り値である『F32』です。
ここまで絞る事はあまり無いと思いますが、ボケに着目してみると背景まで概ねピントが合った状態となっているのが確認できると思います。
絞れば絞るほどシャープになる、というのは間違いです
という事で、F値ごとのボケ量の違いを見てみると、F2.8〜F32まで、絞りを絞れば絞るほど背景のボケ量が少なくなっていく事が確認できました。
じゃぁシャープに写すためには絞りをできるだけ絞ったほうが良いの?と思われるかもしれませんがそうではありません。確かに絞った方が背景のボケ量は少なくなるのですが、ある一定のところまで絞ると『回折現象(小絞りボケ)』と言って、画像の鮮明さが失われていく事になります。
これを見ると、明らかに『F8.0』の方がシャープに写っている事がわかると思います。
レンズが持っている性能をフルに発揮したいとい事であれば、F値は『F8.0』付近と覚えておくと良いと思います。
ただし、これはレンズによっても変わってくるので、実際にレンズごとにテスト撮影してみて、写りを確認してみるのが一番です。
F値(絞り値)のボケ以外の効果について
これまではF値の変化によるボケの量について見てきたのですが、それ以外にもF値の違いによって得られる効果があります。
1. パンフォーカス
これもボケ量のコントロールの一つと言えるのですが、その中でも手前から奥まで全体にピントが合った状態の事をパンフォーカスと言います。
上の写真だと、鳥居からその先に続く参道の奥までピントが全体に合っている事がわかると思います。
例えば、手前の湖と奥にある山を一緒に写す風景写真や、観光地で被写体である人と奥の建物などを一緒に撮る時などは、絞りを絞ってパンフォーカス気味に撮るとどちらにもピントが合ったわかりやすい写真になります。
2. 光芒(光条)を出す
光芒というのは、強い光をフレーム内に入れて撮影した時に発生する、星型のトゲトゲした光の筋の事を言います。
レンズにもよりますが、光芒は基本的に絞りを絞った時に光の筋が鋭くなります。
よって、F値によって光芒をコントロールする事になります。
3. スローシャッターにする
スローシャッターとは、その名の通り遅めのシャッタースピードの事を指します。シャッタースピードを遅くすると光の量が多くなるため、その分絞りを絞って光の量を少なくする必要があります。
上の写真の例ではF値は『F25』となっていますが、意図的にF値をそのようにしたわけでなく、シャッタースピードを『1/40』にした結果、自然とその様に調整されたという感じです。
このシャッタースピードと絞りの関係性は、以下の記事をご参照ください。
明るい昼間にシャッタースピードを長くするには、NDフィルターというカメラのサングラスのようなものを使う必要があるのですが、ある程度の範囲であれば、このようにF値を変えて調整する事も可能です。
まとめ:F値(絞り値)とは?ボケを積極的にコントロールして表現の幅を広げよう
という事で、今回はF値(絞り値)について解説してきました。
一眼レフを手にすると、最初は嬉しくて開放ばかり撮ってしまいがちですが、自分でF値を積極的にコントロールできる様になると、更に楽しく写真を撮る事ができるようになります。
F値を変えてボケ量をコントロールするのはカメラの基本操作になりますが、それ以外にもたくさんの効果があるので、自分のものにできるようぜひ色々と試してみてください。
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